脳梗塞で右半身不随になった男の軌跡


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カテゴリ:自宅介護(12話)( 12 )

4-12 息子の結婚式

結婚式での新郎の父の挨拶。

スピーチ好きの男にとって、

こんな感動的な舞台は、

このうえない大好物といえるだろう。


しかし今のこの片麻痺の男にとっては最大の課題となっていた。


息子は春に式を挙げる予定であったが、

3月に父親が脳梗塞に倒れ、11月に延期していた。


秋には回復してくれているという期待もあり、

加えて大好きなスピーチを目標に

リハビリしてもらいたいという願いもあったのだろう。



そしてついに挙式の日がやってきたのである。

有名なある料理人のレストランにて親族を集めてのウエディングだった。


式も披露宴も和やかに楽しく過ぎた。

さあ、最後の挨拶だ。

まだ麻痺の残る話し方。

昔のように豪快に笑いながら流れるようなスピーチはできない。

それでもただゆっくりと懸命に話をした。


時が過ぎてこの時を思い返せば、

麻痺が残る話し方は聞き取りにくく、

そのうえ表情は固く、まだ精神の不安定さも見えてしまう顔つきだった。


だが、倒れてから数か月、

この日のためにリハビリに励み、

当日たくさんの人の前にたてたことは、

男にとっても家族にとっても大きな一歩であるに違いなかった。


息子夫婦よ、今日の船出に乾杯!!



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by higeji-musume | 2012-10-18 22:21 | 自宅介護(12話)

4-11 紙と鉛筆と絵の具

自宅療養に入ってしばらくたったが

やはりパニックに陥ると

とたんに精神が崩壊してしまう男であった。


しかし昼間の落ち着いた時間には、

リハビリを兼ねて妻と二人で街を散策した。



この散策の必需品は紙と鉛筆と絵の具であった。

右半身麻痺ににより利き腕を失ったが、 

入院中から、左手を使い字を書く練習をしていた。


麻痺している右手のリハビリよりも

左手一本で何でもできるようになりたかったのだ。


スケッチの時間は、男に平穏な時間を与え、

周りから誉められることで自信も沸き、

左手の訓練にもなり、

新たな人生の趣味・生きるはりあいにもなった。

そして外に出掛け、他の人と話す機会も増やすことができた。


紙と鉛筆が、

暗闇を彷徨っていた男に、

新たな道を与えた。




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by higeji-musume | 2012-03-10 22:45 | 自宅介護(12話)

4-10 父と娘の残酷な1日の終わり

数時間が経ち落ち着いた娘は、パソコンを開いた。

そして母のアドレスにメールを打った。


 ―お母さん、ごめんなさい。

留守を頼まれたたった1日に、父親を突き飛ばしてしまったこと。

自宅介護になってから、お父さんの精神の崩壊状態に我慢してきたが、

それが爆発してしまったこと。

体の不自由な人にたいして、自分を止められなかったこと。

お母さんは倒れてからずっと一人でお父さんを支えてきたのに、

私はお母さんの代わりどころか、役にも立てなかったこと。

すべてを詫びた。


そして…

本当に申し訳ないが、今、私にはお父さんと二人で長時間留守番はできない。



・・・という、母にとってのたった一人の頼りの存在を拒否する文を打った。

なんてひどい娘だろう。

母の心労を一番近くで見てきたのは自分なのに。

でも今の自分には父を突き飛ばす娘にだけはなりたくなかった。



―ごめんなさい。

娘にはもうこの言葉しか出てこなかった。


その日帰宅した母親は、すぐにそのメールを見た。

その後、母は娘に特に何も言わず、

またいつも通り、介護生活が始まった。



娘は、自分に何も言わない母に、申し訳なささを感じながらも、

とにかくありがたく思った。

自分にはもう少し父を受け止める時間が必要だったのだ。



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by higeji-musume | 2011-12-31 06:55 | 自宅介護(12話)

4-9 父と娘の残酷な1日③

「何言ってるわかんないよ!!!

 情けない姿しないでしょ!!!
 
 しっかりしなよ!!!!」

娘はいきなり吐き出すように、父親に向かって叫んだ。

父親は今度はあわあわと奇声を発し叫びだした。


もう娘は自分を止められなかった。

ドオン!!!!

思い切りではないが父を突き飛ばした。


右半身不随の父を!

要介護5の父を!!

一人で起きられない父を!!!

娘は突き倒したのだ。


「痛い!痛い!」と叫ぶ父を後ろに

娘は自分の部屋に駆け込んだ。


 ━私、なにやっているんだろう。

 ━こんな卑劣で薄情なことをするなんて。


涙が溢れてきた。


父の声が廊下から聞こえてきたが、

もう部屋から一歩も出なかった。


ただ一人で声を上げずに泣いていた。


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by higeji-musume | 2011-12-29 22:00 | 自宅介護(12話)

4-8 父と娘の残酷な1日②

父親の部屋に行くと、

立ち上がってワアワアと叫んでいる。

「どうしたの?」

娘は聞いた。


パニックになって叫んでいるし、講音障害もあるし

何を言っているのかわからない。


「なに?なにかしたいの?」

娘は何度も冷静に話しかけた。


だが、自分の要望を聞いてもらえないことで

さらに慌てているようだった。

大の大人がここまで叫ぶだろうかというほど

一度狂い始めると止められない、これが脳の病気であろう。


  カアサンハ ドコダ!
 
  マダ カエッテ コナイノカ?!

  オマエジャワカラン!! 

とでも言っているのだろうか。


娘はなんだかむしゃくしゃしてきた。

  なんなんだいったい。

  今まで好き勝手に生きてきたくせに。

  病気になってみんなに大変な思いをさせて。

  挙句の果てに娘の私にこんなみっともない姿を見せて。



パニックになって叫ぶ父親の前で

娘はだんだんと腹が立ちすぎて頭が白くなった。
 


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by higeji-musume | 2011-12-28 22:00 | 自宅介護(12話)

4-7 父と娘の残酷な1日①

その日、妻は一人外出していた。

 
マンションの中では、

娘が母親の代わりに父親を看ていた。


突然の脳梗塞で半身不随になり、

いまだ精神不安定で、

自宅療養生活にまだ慣れていない父親と


今まで豪快に生きてきた父の変わり果てた姿に失望し、

毎日悪夢を見て

帰宅拒否症になっていた娘。


2人だけの留守番に何も起こらないわけが無かった。


娘が一人自分の部屋でくつろいでいると

父親の部屋からなにやら叫び声が聞こえた。


・・・ああ・・・また、パニックか・・・

娘はしぶしぶ父親の部屋に向かった。



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by higeji-musume | 2011-12-27 22:21 | 自宅介護(12話)

4-6 悪夢

仕事から帰ると父と母の姿がない。

どこ?

家中を探すと、風呂場で倒れて動かぬ父と

立ち尽くす母をみつけた。

お母さん!

まさかお父さんを!?



ここで目が覚めた。

またホラーな夢をみてしまった。



朝ご飯を食べながら

娘は新聞の社会面を開いた。


ああ、またこんな事件か…。

老老介護、介護疲れで妻が夫を殺害。

このところ、こんな記事が目につく。



今までの自分なら、

…なにも殺さなくたっていいのに。

と、思ったかもしれない。


でも今は、わかる。

この状況が永遠に続くのかと思う恐怖。


何事も、自分がなってみなければ、わからない。


人の心を簡単に推し量ることなんてできないんだな

こんなこと考えては

お陰で一回り成長させてもらってます。と

娘は前向きに切り替えた。


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by higeji-musume | 2011-10-29 22:38 | 自宅介護(12話)

4-5 先人の言葉

社会復帰に向けて大切な

患者と介護する家族の障害受容。


我が家がその受容を早めにできたのは

たぶんもともとのポジティブな考え方と

妻を支えた先人の言葉があったからであろう。


妻が実母の闘病中に出会った

ある神学者の言葉がある。


ニーバーの祈り
神よ、
変えることのできるものについて、
それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、
それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、
変えることのできるものと、変えることのできないものとを、
識別する知恵を与えたまえ。



勇気と冷静さと知恵、

人が困難に立ち向かう時それはとても重要だ。

少しの勇気、少しの冷静さ、少しの知恵でもいい。

その3つを持って歩き出そう。




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by higeji-musume | 2011-09-29 23:02 | 自宅介護(12話)

4-4 障害受容

障害受容

それが回復へのまずは第一歩なのだろう。


しかしまだ男は障害受容できていなかった。

今まで自由勝手気ままに生きてきた自分が、

家のなかに閉じこめられ、

介護の手がないと何もできない。

そんな障害をおったということが受け入れられなかった。


そして妻も障害受容ができなかった。

早く夫を復活させたい気持ちが、

患者の回復する程度や時間に

限度があることを受け入れなかった。


一番大切な「受けとめる」という作業。

受けとめてから、すべてが始まると言ってもいい。


この家族は退院してもなお混沌とした世界をさまよっていた。

いや、退院したからこそ浮き彫りになったのだろう。


今、振り返れば、この時の家族は

みな障害受容ができず、自宅介護の恐ろしさを抱えていた。


それでもここから、

一歩一歩少しずつ現実を受けとめていったのだ。



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by higeji-musume | 2011-09-26 22:10 | 自宅介護(12話)

4-3 帰宅拒否症

さあ仕事が終わった。

帰るか。

帰るか。

帰らなくちゃなぁ。


大学で一人暮らしする前までは

寄り道せずまっすぐ家に帰る、おうち大好きな娘だった。

家に帰ってもほとんど自分の部屋には行かず、

居間で家族といろんな話をするのが好きだった。


そんな娘が、今は帰宅を躊躇していた。

何がいやなことがあるわけでも

自分が父の介護をしないといけないわけでもない。


ただ、

なんとなくいやだったのだ。

変わり果てた父の姿を見るのが。

疲れ果てた母の姿を見るのが。


入院中は優しく父のことを応対していた娘であったが、

自宅介護になり父の現実状態を目の当たりにし

客観的に見れなくなってしまったのだ。


吉祥寺の駅を意味なくぶらつき、

覚悟を決めて電車にのった。

少しだけ帰宅の足取りは重かった。


退院したばかりの父との同居生活のはじまりは

娘が初めての帰宅拒否症にかかった数か月であった。


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by higeji-musume | 2011-09-06 22:12 | 自宅介護(12話)